研究概要 |
手首運動課題を実行中のサルの一次運動野及び腹側運動前野より、課題実行に関係するニューロン活動を記録した。サルに行わせた運動課題は手首運動に関係する3つの座標系すなわち、筋肉座標系、関節座標系および空問座標系を区別できるように工夫されたもので、類例の実験系は存在しない。この実験系でM1およびPMvに大きく分けて3つの機能的に異なるグループのニューロンが存在することが明らかになった。第一のタイプは「外部座標系」ニューロンで、このグループのニューロンは、筋肉活動や関節の動きとは無関係に、空間内における運動の方向をコートしていると考えられた。第二のタイプは「姿勢によるゲイン変化付き外部座標系」で、「外部座標系」ニューロンと同様に最適方向の回転は見られなかったが、姿勢に依存したケイン変化が認められた第三のタイプは「筋肉座標系」ニューロンで、このタイプのニューロンは筋肉の活動と同じ最適方向の回転様式を示した。PMvにおいては、大部分(48/59.81%)のニューロンが「外部座標系」に分類され、小数のニューロン(7/59,12%)が「ゲイン変化付き外部座標系」に分類された。一方M1では、3つのタイプのニューロンがおおよそ均等な割合で記録された。今回我々の得た研究結果は、M1とPMvの間における情報交換が、外部座標系から内部座標系への感覚運動変換に貢献している可能性を示唆しているものと考えられた。そこで、今回の実験で得られた結果を基にしたシミュレーションを行い、そのような可能性が計算論的にも妥当なモデルであることが確認された。
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