研究課題/領域番号 |
14580793
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
神経・筋肉生理学
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研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
赤須 崇 久留米大学, 医学部, 教授 (60113213)
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研究分担者 |
蓮尾 博 久留米大学, 医学部, 助教授 (90172882)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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キーワード | 外傷後てんかん / 実験的脳外傷モデルラット / 海馬スライス標本 / 光学的電位記録法 / 細胞外電極法 / 細胞内電極法 / パッチクランプ法 / EPSP |
研究概要 |
中等度の液体圧衝撃をラットの左頭頂部大脳皮質に与えて作成した実験的脳損傷モデルラットfluid percussion injury rat(FPIモデルラット)から、海馬領域を含む厚さ約400ミクロンの水平断脳スライス標本を作製した。平成14年度:電位感受性色素を用いた光学的電位記録法により海馬CA3-CA1における活動電位の伝播を記録すると、傷害された大脳皮質直下の海馬では外傷側のニューロン活動性とその伝播領域が、非外傷側に比べ著明に抑制されていた。一方、外傷部位から離れている脳底部付近の(側頭葉皮質に隣接する)海馬では非外傷側に比べ外傷側の海馬ニューロンの活動性はむしろ強く亢進していた。また、細胞外電極法により得られたfield potentialは、外傷側において反復性のスパイクを持ち、明らかに興奮性の増大が認められた。興奮性シナプス後電位(EPSP/EPSC)の時間経過(time course)が著明に延長し、このEPSPによって活動電位がくり返し惹起された。FPIラットにおける興奮性の増大は抑制神経の障害による脱抑制によってもたらされたのではなく、興奮性神経のシナプス伝達が直接、過剰興奮を起こしているものと考えられる。平成15年度:FPIモデルラットの海馬ニューロンにおいて、刺激の大きさと反応(EPSPの立ち上がり速度:EPSP slope)の関係(input-output relation:I-O関係)をみたところ、衝撃側で興奮性シナプス伝達が抑制されていた。しかし、神経細胞の静止および興奮時の電気生理学特性には健常ラットと差異はなく、障害ラット脳の左右差も認められなかった。興奮性シナプス伝達の長期増強(LTP)は傷害側、非傷害側に差は見られないが、全体的に健常ラットに比べ抑制された。一方、長期抑制(LTD)の亢進が見られるなど衝撃が脳全体に及んでいることがわかった。アデノシンと類似の脳保護作用を持つことが示唆されているアンソラキノン誘導体(イモデインやレイン)はFPIモデルラットにおいて緩徐であるが可逆性にグルタミン酸遊離を抑制する作用を持つことが示唆された。
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