これまでの研究により、副腎髄質からのカテコールアミン分泌にGABAが促進的に働くことと、その作用がGABA_A受容体を介することが明らかになった。しかし、このGABAが副腎髄質細胞由来なのか、それとも神経線維由来なのか不明である。そこでこの問題をイムノプロット法と免疫組織化学法により検討した。GABAの合成酵素であるglutamatedecarboxylase (GAD)に対する抗体は、ラット脳のホモジネートのイムノプロットでは65と67kDaの蛋白を認識したが、ラット副腎髄質のホモジネートでは認識しなかった。しかし抗GAD抗体を用いた副腎の免疫組織化学では、副腎皮質細胞は染まらなく髄質細胞のみが染まった。GABAが副腎髄質細胞に存在するのであれば、GABAを分泌顆粒に貯蔵するvesicular GABA transporter (VGAT)も髄質細胞に存在することが期待される。そこで、抗VGAT抗体を用いて副腎を免疫染色すると、GADの場合と同様に、皮質細胞は染まらずに髄質細胞のみが染まった。以上の結果は、副腎髄質においてGABAが髄質細胞からオータクリンまたはパラクリンとして分泌されていることを示唆する。次にGABA_A受容体の分布を抗α_1サブユニット抗体及びβサブユニット抗体を用いて調べた。抗α_1抗体では髄質細胞及び皮質細胞とも染色されなかったが、抗β抗体では皮質細胞は染色されず、髄質細胞のみが染色された。
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