これまでの研究により、副腎髄質からのカテコールアミン分泌にGABAが促進的に働くこと、そしてその作用がGABA_A受容体を介することが明らかになった。しかし、この促進作用をもつGABA_A受容体がどのサブユニットにより構成されているかは不明である。そこでこの問題をイムノプロット法と免疫細胞化学法により検討した。抗α1サブユニット抗体を用いたイムノプロットでは、ラット脳、副腎皮質と副腎髄質のホモジネートにおいて、約50kDaのバンドが観察された。脳と副腎髄質のこのバンドは、抗体をあらかじめ抗原に吸着させた後で抗体処理すると消失したが、副腎皮質のバンドは消失しなかった。これらの結果は、α1が脳と副腎髄質には存在するが、副腎皮質には存在しないことを示している。 一方、抗α3抗体は脳と副腎髄質のホモジネートにおいて、約54kDaのバンドを認識したが、副腎皮質においては認識しなかった。抗γ2抗体は、脳、心臓、副腎皮質そして副腎髄質のホモジネートにおいて、約50kDaのバンドを認識した。これらのバンドは予め抗体を抗原に吸着させた後に抗体処理すると全て消失した。これらの結果から、副腎髄質には幼若型のα3サブユニットばかりでなく成熟型のα1サブユニットも存在することが明らかになった。そこでα1サブユニットの細胞内分布を共焦点レーザー顕微鏡と免疫細胞化学を用いて検討した。α1様免疫反応物は細胞辺縁ばかりでなく細胞内にも分布した。細胞辺縁の免疫反応は核近傍の細胞膜領域ばかりでなく、核と反対側の細胞膜領域にも分布した。モルモット副腎髄質細胞においては、シナプスは核近傍の細胞膜に限局している。このことから、GABA_A受容体α1はシナプス部位とは関係なく広範囲の細胞膜に分布することが考えられる。
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