ラットのlysosomal trafficking regulator(Lyst)遺伝子内に存在するL1b配列に関して以下の知見を得た。 1.ACI-beigeラットにおけるChediak-Higashi症候群様の症状の原因が、Lyst遺伝子内に存在する二つのL1間の組み換えに起因することを明らかとした。そのうちの一つであるL1bの全長をクローニングし、塩基配列の決定を行なった結果、2つのオープンリーディングフレーム(ORF1とORF2)とその5'上流域にSp1ボックスを含むプロモーター様配列、3'下流域にpoly A配列、またその全長の上下流に短い反復配列が認められ、典型的なL1レトロトランスポゾン構造を有していることが明らかとなった。 2.DA/Ham-Lyst^<bg>とBN系ラットとの戻し交雑仔を用いて連鎖解析を行なった結果、Lyst遺伝子は第17番染色体長腕の末端付近に位置することが明らかとなった。 3.DA/Ham-Lyst^<bg>とACI/N-Lyst^<bg-Kyo>の2系統のベージュラットがもつLyst遺伝子上の変異、および正常系統がもつ野生型対立遺伝子を容易かつ正確に識別するためのnested PCR-RFLP法を開発した。この結果、Lyst^<bg>とLyst^<bg-Kyo>は全く同一のL1配列間の組み換えに起因するが、その組み換え部位は対立遺伝子座間で異なることが明らかとなった。 4.serial analysis of gene expression(SAGE)法を用いてマウス精巣でのL1配列の転写発現レベルは極めて低いことを明らかとした。 5.L1bを哺乳動物発現ベクターpCEP4中にクローニングし、培養HeLa細胞にトランスフェクトすることによりレトロトランスポゾン活性を証明した。
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