研究概要 |
スンクスは食虫目トガリネズミ科ジネズミ亜科ジャコウネズミ属ジャコウネズミの実験動物名であり,主に熱帯・亜熱帯地域に分布し,北限が日本の長崎となっている.この動物の分布域の特徴から甲状腺機能に何らかの特性がないかを検討した.その結果,従来使用されてきたラットなどの実験動物とは大きな相違が発見された.ヒトにおいては最近の研究からD1よりD2の働きが優位ではないか,と考えられるようになってきているが,ラットよりもスンクスがD2動物の可能性があり,ヒトのモデルとして有用になってきた.1.体温維持の点からT3の低下によるlow-T3 syndromeを想定したが,甲状腺ホルモンの定量の結果はラットやヒトと大きな差はみられなかった。すなわちヒトでT3は80-190ng/dl, T4は5-12ug/dlが正常値であるが,スンクスもこの範囲にはいっていた.2.脱ヨード酵素D1およびD2活性の組織内分布をみたところ,ラットにおいては肝臓,腎臓,甲状腺にD1の高い酵素活性がみられた.一方,スンクスにおいては肝臓に活牲があるものの腎臓や甲状腺では活性がないか,またはきわめて低かった.これに対してD2活性はスンクスではラットに比較すると褐色脂肪組織で著しく高く,また大脳皮質でも高かった.このことからラットなどは血中T3は主にD1によって供給されているのに対し,スンクスではD2によって供給されていることが推定された.3.脱ヨード酵素D1およびD2のクローニングを行ったが,他種の動物のものとほぼ同じであつた.D2についてもノザンブロット解析の結果、活性の確認されている大脳皮質,下垂体,BATにおいてmRNAの発現が確認された.また,このとき得られたバンドの長さが,多動物種のD2 mRNAの全長に相当するものであった.
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