本研究は、既に分離したラット由来パラインフルエンザウイルス3型(PIV3)の遺伝子解析を行い、系統学的位置を明らかにすると伴にラットやマウスへの病原性を評価することを目的とする。 分離ウイルスNo.24株のHN領域の遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹解析をおこなった結果、1716塩基、572アミノ酸をコードできる塩基配列でありヒト型のprototype47885株に近縁であり、ヒト型PIV3の一群に入ることがわかった。ヒト型PIV3がラットより分離されたことは、飼育管理者等の人を介してPIV3がSPF SDラット繁殖コロニーに侵入し、更にラット間で感染で継代維持されている可能性を示唆する。 次にこの株のラット及びマウスへの病原性を評価するために感染実験を行った。高用量感染群と低用量感染群の2群に別け感染後21日までの7定点で肺内ウイルス量、抗体価を測定し、その病理組織学変化を観察した。SDラットでは、低および高用量群ともに、3日5日目にウイルスが肺乳剤より回収され、ウイルスゲノムも1st PCRより検出され明らかにウイルスの複製が示唆された。また、感染後5、7日目より病変は観察され、気管上皮細胞の変性、剥離およびアポトーシスが観察された。また気管上皮細胞の核内に好酸性の封入体が認められ、気管支粘膜固有層には非化膿性の炎症が観察された。7日目より持続的にPIV3特異抗体は検出された。10日目以降は、ウイルス価も低くなり、病理組織学的変化も観察されなくなった。このことは、一過性の病変とはいえラット由来PIV3は、SDラットに対して病原性を有していることが示唆された。ICRマウスでは、感染後、7日から10日目に抗体が検出されたものの肺炎等の病変は観察期間を通じて観察されなかった。このことは、マウスでは、No.24株は積極的なウイルスの増殖、病原性の発現には至らないことを示している。
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