実験用ラット繁殖コロニー内にパラインフルエンザウイルス3型(PIV3)感染症が血清学的に証明され、そのウイルスの由来及び病原性が問題となっている。RT-PCR陽性肺乳剤をvero細胞に接種し原因ウイルスの分離を試みた。その結果、盲継代2代目でPIV3ゲノムの複製がRT-PCR法で示唆され、さらに3代目より、巨細胞が観察された。抗ヒトPIV3抗体による直接蛍光抗体法で細胞質に特異蛍光を示した。またHI(+)SDラット血清とも同様に強く反応した。モルモット血球に対してHA活性を有し、目的としたPIV3を分離できた。この分離ウイルスNO.24株のHN領域の遺伝子の塩基配列を決定し、系統樹解析をおこなった結果、1716塩基、572アミノ酸をコードできる塩基配列であり、ヒト型PIV3の一群に入ることがわかった。ラット及びマウスへの感染実験を行った結果、ラットでは、感染後3日〜5日目の肺乳剤よりウイルスが回収され、明らかにウイルスの複製が示唆された。また、感染後5、7日目より、気管上皮細胞の変性、剥離およびアポトーシス等の病変が観察された。気管上皮細胞の核内に好酸性の封入体が認められ、気管支粘膜固有層には非化膿性の炎症が観察された。7日目より持続的にPIV3特異抗体は検出された。10日目以降は、ウイルス価も低くなり、病理組織学的変化も観察されなくなった。このことは、一過性の病変とはいえラット由来PIV3は、SDラットに対して病原性を有していることを示す。ICRマウスでは、感染後、7日から10日目に抗体が検出されたものの肺炎等の病変は観察期間を通じて観察されなかった。マウスでは、このNo.24株は積極的なウイルスの増殖、病原性の発現には至らないことを示している。実験用ラットからヒト型PIV3がラットより分離されたことは、飼育管理者等の人を介してヒト型PW3がSPF SDラット繁殖コロニーに侵入し、更にラット間で感染で継代維持されている可能性を示唆する。
|