研究概要 |
これまでに行った実験により、クロラムブシルを投与し、ミュータジェネシスを行った雄ラット(系統名:BN)と正常雌ラット(系統名:F344)を交配し、得られた仔ラットをG1世代とし、このG1世代ラットを基にして交配を行い、G2,G3,G4世代のラットを得た。今年度になり、G4世代仔ラット1リッター中に正常な個体の他に、体重が正常個体に比べ低いと考えられる複数の個体を得た。またこれら体重減少が見られる個体群には2つのグループがあり、一つのグループは他方に比べ更に体重が減少していた。これらの矮小化個体特別の出産にも観察されたことから、個体としての矮小化は遺伝的な変異によってもたらされるものと考えられた。 この最も矮小化したグループの遺伝的変化を観察するため、生後0日齢のG4世代の仔ラットのうち、正常個体2頭(平均体重5.46g)と矮小個体3頭(平均体重2.79g)から大脳と肝臓をサンプリングし、RNAを抽出し、マイクロアレイ(CodeLink Uniset Rat Expression Bioarray、約9,900遺伝子)を用いて遺伝子発現を比較した。その結果、約10個の遺伝子についてはシグナル強度が数十倍から200倍程度違うことが観察された。このシグナル強度の違いは遺伝子の発現量の違いに相関すると考えられる。すなわち正常個体に比べ矮小個体では特定の遺伝子が発現していない可能性が考えられた。これはG0世代に行ったミュータジェネシスによって遺伝子が欠失した結果であると想像され、現在それぞれの遺伝子について遺伝子発現とゲノムの遺伝解析を行い、遺伝子欠失に関する解析を進めている。
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