本研究は拡散強調MRI計測により、肝再生にともなう機能回復の定量評価の可能性を基礎的に明らかにする目的で行い、以下の結果を得た。 1.1.5テスラ臨床用MRI装置によるラット肝の拡散強調画像(DWI)および見かけの拡散係数(ADC)測定のためのSE-EPI法の最適測定条件を検討した。ADCを求めるためのb値を0〜1000sec/mm^2(6点)とし、体軸断面像を撮像した。 2.MRI装置で得られた撮像データをオフラインで医療画像解析ソフトDr.View/Linuxを搭載したADC解析システムを構築した。また、脱イオン水、アセトンから成るファントムを対象にADC解析を行った結果、脱イオン水のADCは2.07×10^<-3>(mm^2/sec)、アセトンのADCは3.91×10^<-3>(mm^2/sec)であり、文献値と同等の結果であった。この結果は、本システムの測定精度が妥当であることを示している。 3.無処置コントロールラット肝を対象にDWI計測を行い、画像上でのROIの位置によるADC値に差異はないことを確認した。また、拡散強調の傾斜磁場の印加方向の違いによる拡散の異方性は認められなかった。コントロール群における肝のADC値は(1.85±0.28)×10^<-3>mm^2/secであった。 4.65%部分肝切除後1週から6週経過群を対象として、再生肝のDWI計測を行ないADC値の推移を検討した。この結果、ADC値は1週群では(1.34±0.34)×10^<-3>mm^2/sec、2週群では(1.37±0.15)×10^<-3>mm^2/sec、3週群では(1.24±0.21)×10^<-3>mm^2/sec、4週群では(1.33±0.26)×10^<-3>mm^2/secとコントロール群に比べて低値を示した。また、5週群、6週群で各々(1.19±0.25)および(1.29±0.11)×10^<-3>mm^2/secと同様に低値を示した。 5.肝切除後の再生肝のADC値の推移と組織構築との関連性を検討すべく、組織標本を作製中である。
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