乳幼児突然死症候群は乳幼児に何の予兆、既往歴のないまま突然の死をもたらす疾患であり、その原因は未だに不明である。危険因子として疑われている原因の1つに「うつ伏せ寝」による窒息死がある。託児所で圧迫死と見られる事故で乳幼児が亡くなるという事件があったが、事故死なのか病死なのか判断がつかない場合も多い。このような事態を防ぐためには、普段から乳幼児の健康モニタリングや監視が必要である。本研究では家庭や託児所でのケアを目的とした無拘束心拍、呼吸信号および体動のエピソードを記録するシステムを構築することを目的とした。乳幼児の主要な生活の場であるベッドに健康管理指標のためのセンサを内蔵し、無意識無拘束下で心拍数や呼吸数、および体動などの記録が行われる自動計測システムの開発を行った。センサとして高分子圧電ケーブル素子を用い、体幹をスライスするような形にベッド上に8本取り付けた。呼吸や心拍動に伴う胸郭の動きをセンサで捉え、蓄積電荷を電流電圧変換した後、信号をA/D変換した。サンプリングしたデータはディジタルフィルタを通して心拍、呼吸信号を抽出した。8チャネルの信号の中から自動的に最適なセンサを選択し、呼吸は15秒毎、心拍は5秒毎にフィルタ通過後の信号の自己相関を求め、呼吸数と心拍数を計測した。体動があった場合には高感度CCDカメラが作動して寝相をcaptureし画像データとしてファイリングする。今回は成人被験者10名を対象に検証実験を行ったところ、安静状態では体位によらず呼吸および心拍数をモニター可能であった。10分間の平均値を対照値と比較したところ、呼吸数で平均-4.9±3.4%、心拍数で0.0±3.0%であった。また、睡眠時のデータを計測したところ、6時間以上に亘って計測可能であることが示された。今後よりロバスト性を高めるためにソフトウェアの改良を図り、乳幼児の計測を進める予定である。
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