超音波による実時間三次元心筋局所収縮率分布イメージング法の開発

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14580811
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 椎名 毅 筑波大学, 電子・情報工学系, 教授 (40192603)
• 研究分担者: 千田 彰一 香川医科大学, 医学部附属病院総合診療部, 教授 (30145049)
• キーワード: 医用画像システム / 超音波診断 / 心筋収縮率分布 / 可視化技術 / 非侵襲計測 / 虚血性心疾患 / 心筋壁運動異常診断

研究概要

心筋壁運動の異常は、心筋梗塞等の虚血性疾患の早期に現れ、さらに局所壁運動異常の客観的、定量的な診断は、心疾患の病態評価や治療法の選択に役立つと考えられる。この壁運動異常の診断法として、従来の組織ドプラ法や心筋ストレイン法は、心筋の胸壁に対する速度や、収縮の超音波送受方向の成分のみを表示するため、局所的な壁運動異常の診断は難しい。本研究では、このような問題点を克服して、心筋壁運動の客観的、定量的な診断を可能とするため、超音波エコーから心筋の各部位における3次元的な真の収縮の状態を実時間で可視化する手法の開発を目的とする。本年度は、最終年度として以下の項目について研究を実施した。
【心筋局所収縮量を表すパラメータの導出】前年度に開発した手法で得られる心筋局所変位ベクトルと歪みテンソルは多数要素からなり、また座標の取り方に依存する点で扱いにくい。このため、座標系によらない量として、心筋の厚み方向の歪みや体積歪みなどを、収縮率を表すパラメータとして導出した。
【一次元アレイ探触子への適用】三次元心筋収縮率分布の計測は、二次元アレイ探触子の利用を想定しているが、これを簡略化し実用化が容易なものとして、一般の一次元アレイ探触子を用いて断層面内での心筋収縮率分布を得る手法について検討した。壁運動異常のある心筋モデルを用いたシミュレーション解析により特性の評価を行った。
【基礎実験による検討】蒟蒻、シリコンゴム等による心筋ファントムを用いて、基礎的な実験を試み、開発した手法の有効性を検証した。
以上、開発した手法では、心筋局所収縮率を高速、定量的に、かつ従来法では検出が困難な位置にある梗塞部位でも描出可能なことが確認された。実用化のためには、今後、二次元アレイ探触子を用いた評価システムによる臨床計測に近い条件での実験的検証が必要であるが、当初の目的はほぼ達成されたと考える。

研究成果

• [文献書誌] 新田尚孝: "血管内エコー法を用いた冠動脈弾性イメージング"電子情報通信学会論文誌D II. Vol.J87-D-II, No.1. 78-87 (2004)
• [文献書誌] Naotaka Nitta: "Ultrasonic Imaging Based on Measurements of Viscoelastic Hysteresis in Soft Tissue"生体医工学. Vol.41, No.4. 295-305 (2003)
• [文献書誌] M.Yamakawa: "High-speed Freehand Tissue Elasticity Imaging for Breast Diagnosis"Japanese Journal of Applied Physics. Vol.42, No.5B. 3265-3270 (2003)
• [文献書誌] Tsuyoshi Shiina: "Clinical Assessment of Real-time Freehand Elasticity Imaging System Based on the Combined Autocorrelation Method"2003 IEEE Internationa ; Ultrasonics Symposium Proceedings. 664-667 (2003)
• [文献書誌] Naotaka Nitta: "Myocardial Strain Imaging Based on Three-Dimensional Motion Tracking"2003 IEEE International Ultrasonics Symposium Proceedings. 1258-1261 (2003)
• [文献書誌] Naotaka Nitta: "Hysteresis Parameter Imaging of Soft Tissue under Quasi-Static Deformation"2003 IEEE International Ultrasonics Symposium Proceedings. 1606-1609 (2003)