研究課題/領域番号 |
14580814
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
奈倉 正宣 信州大学, 繊維学部, 教授 (70021178)
|
研究分担者 |
寺本 彰 信州大学, 繊維学部, 助手 (40227525)
大越 豊 信州大学, 繊維学部, 助教授 (40185236)
阿部 康次 信州大学, 繊維学部, 教授 (00126658)
後藤 康夫 信州大学, 繊維学部, 助手 (60262698)
|
キーワード | セリシン / ゲル / 架橋 / 膨潤率 / 高分子量 / 表面電位 |
研究概要 |
通常の繭から得られた高分子量セリシンから得られた含水ゲル膜は、β型結晶を多く含み、特異的な性質として放湿には時間がかかることを明らかにした。このことからスキンケアー材としての応用が可能と考えられた。 セリシン蚕セリシンより得られた高分子量セリシンの含水ゲル膜は水に溶解し難い事が期待されたが、このセリシン膜を膨潤する際、膜からセリシンが溶出することが分かった。 スキンケアー用品や細胞増殖基材に用いることを考慮し、人間の体温付近の38℃でセリシン膜の溶出率の時間依存性について調べたところ、1日までに急激な溶出があり、溶出しなくさせるには5日間膨潤する必要があることが分かった。セリシンにスキンケアー効果があると言われている事から、溶出の過程でスキンケアー効果が発揮されることが予想された。 一方、細胞増殖基材としては溶出が細胞付着を妨害する可能性もあり、溶出の終了した膜でしかも取り扱う上で十分な力学的性質があることが必要である。5日間膨潤後のセリシン含水ゲル膜は架橋密度が約10分の1になり、強度・伸度ともに大幅に低下した。また、膨潤率はいずれも200%を超える値を示し、5日間膨潤後のゲルを取り扱う際は慎重にしなければならない事が分かった。細胞付着増殖性は表面の性質にも依存することから、それぞれの試料の接触角と表面のゼータ電位を測定した。接触角は約90°であり、細胞が付着しやすい接触角約70°のものより細胞付着性は若干低いと予想された。一方、ゼータ電位は5日間膨潤することにより低下し、セリシン含水ゲルは膨潤することによりカルボキシル基などの親水性アニオン基を多く含む低分子量の部分が溶出していること、そして表面のアニオン性が低下する事は細胞表面がアニオンであることを考慮すると、静電的な反発力が低下し、5日間膨潤させると細胞付着増殖性には良い効果をもたらすものと予想された。
|