胸部単純X線像において解剖学的ノイズが肺の明瞭ではない結節の検出において多大な影響を与えることが知られているが、これまでの定量的な報告では解剖学的構造が結節の検出能にどのような影響を与えるかについての系統的な知見は明らかとはなっていない。そこで我々は、前年度の基礎的検討結果をふまえて、胸部単純X線像における解剖学的ノイズが明瞭ではない肺結節の検出能に与える影響について、肋骨との関係に注目して検討を行った。 今回の検討は、Sameiらの用いた方法に準じた方法で行い、正常な胸部単純デジタルX線画像の中から、一定のサイズの区画画像を(既存のシステムと今回開発したツールを使用して)肋骨との関係に着目する形で抽出し(各区画画像は、1)肋骨の上縁、2)肋骨のほぼ中央、3)肋骨の下縁、4)肋骨の間のほぼ中央、が区画の中心にくるように抽出)、区画画像の中心にコンピュータを使用して擬似結節を埋め込んだ画像を用意した。これらの区画画像に大きさの異なる5種類の擬似結節を埋め込んだものと擬似結節を埋めこまないものをランダムに配置した読影実験画像50個を作成した。各区画画像の結節のあるする確信度を回答する形で、12名の放射線科医による読影実験を実施し、結節の埋め込んである各区画画像に対する結節の存在の確信度を結節の検出能の指標として評価した。 その結果、肋骨間において最も有意に結節の検出能が高い結果となり、肋骨の存在は解剖学的ノイズとして結節の検出能を確かに低下させることがわかった。また、肋骨と結節との位置関係が結節の検出能に与える影響については、肋骨の上縁、肋骨の中、肋骨の下縁の順で結節の検出能が低下すると推定されたが、その差はかなり少ないものであるということがわかった。さらに、物理的な雑音の一定以上の増加は、解剖学的ノイズと同等以上の影響を与えることもわかった。
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