撮像系におけるノイズと異常所見以外の正常構造によって形成される解剖学的ノイズが、明瞭ではない異常所見の検出能にどのような影響を与えるのかについての検討を行った。 物理的な雑音である各種のガウス白色ノイズが胸部単純X線写真上の平均的な結節像の検出能に与える影響について、4肢強制選択法と呼ばれている方法による読影実験によって調べた。その結果は、信号検出理論で予測される関係とほぼ一致する結果であり、結節の検出能と異常所見の周囲の解剖学的構造の濃度分布に関する基礎的な統計量との間にはあまり関係がなく、信号検出理論における信号対雑音比が最も関係することが予想された。 次いで、胸部単純X線像における解剖学的ノイズが明瞭ではない肺結節の検出能に与える影響について、肋骨との関係に注目して検討を行った。この検討は、Sameiらの用いた方法に準じた方法で行い、正常な胸部単純デジタルX線画像の中から、一定のサイズの区画画像を肋骨との関係に着目する形で抽出し(各区画画像は、1)肋骨の上縁、2)肋骨のほぼ中央、3)肋骨の下縁、4)肋骨の間のほぼ中央、が区画の中心にくるように抽出)、区画画像の中心にコンピュータを使用して擬似結節を埋め込んだ画像を用意した。これらの区画画像に5種類の擬似結節を埋め込んだものと擬似結節を埋めこまないものを配置した実験画像を作成し、読影実験を実施した。その結果、肋骨間において最も有意に結節の検出能が高い結果となり、肋骨の存在は解剖学的ノイズとして結節の検出能を確かに低下させることがわかった。また、肋骨と結節との位置関係が結節の検出能に与える影響については、肋骨の上縁、肋骨の中、肋骨の下縁の順で結節の検出能が低下すると推定されたが、その差はかなり少ないものであるということがわかった。さらに、物理的な雑音の一定以上の増加は、解剖学的ノイズと同等以上の影響を与えることもわかった。
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