1)前年度に作成したラミニン1、2/4結合型HGF-Ntをマトリゲルに包埋し、マウスの皮下に移植した。HGF-Ntは市販HGFとほぼ同様な血管新生誘導活性を有することが分かった。 2)HGFのアンタゴニストであるNK4は癌の浸潤転移を抑制する。NtとNK4との融合蛋白質を293F細胞で発現精製した。しかし、この融合蛋白質はラミニン結合活性を持たないため、マウスに移植した腫瘍の増殖転移に対する抑制効果を検証する実験が中断した。 3)血管新生に関与する細胞増殖因子HGF、bFGF、VEGFがラミニンとの相互作用を調べた。HGFは血管基底膜に存在するラミニン8、10/11のみと強く結合した。この結合がヘパリンに阻害され、ヘパラン分解酵素処理によって弱められた。ラミニンに結合したHGFは細胞増殖促進活性を示した。bFGFはHGFと同様なラミニン親和性を示したが、その結合能をヘパラン分解酵素処理によって完全に失った。VEGFのラミニン8、10/11の結合能がHGFとbFGFより低かった。低pH条件下(低酸素)でHGFとラミニン10/11との相互作用が低下したが、bFGFが変化しなかった。以上の結果は、血管新生に関与する細胞増殖増殖因子HGF、bFGF、VEGFが間質細胞外マトリックスのみならず血管内皮細胞直下に位置する基底膜にも蓄積され、細胞外環境変化(蛋白質糖鎖修飾やpH変化)に対応して血管新生を制御することを示唆した。
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