研究概要 |
糖質に長鎖アルキル基を導入した糖エステルは,両親媒性化合物が有する物質取り込み能を利用した薬剤輸送システムとしての応用が期待される.本年度は,キチンの構成単糖であるN-Acetyl-D-glucosamine(D-GlcNAc)の3位および6位水酸基にpalmitoyl基を導入したD-GlcNAc-3,6-Palを合成し,その基礎的物性評価として,蛍光プローブであるピレンを用いた物質取込能を検討した.その結果,一定ピレン濃度下で,D-GlcNAc-3,6-Palの濃度を増加させたところ,波長460〜470nm付近にピレンのエキシマー発光の増加が観測された.一方,未修飾のD-GlcNAcではそのようなエキシマー発光の増加は見られなかった.この結果より,D-GlcNAc-3,6-Palは溶液中で会合体を形成し,その中にピレンが取り込まれることが示唆された. さらに,キチン,キトサンを大量かつ中性に近い条件で加水分解可能な水熱分解法による分子量調整法について検討した.その結果,キチンやキトサンはその結晶性を低下させることにより,酸触媒を添加することなく低分子化されることがわかった.結晶性のキチンやキトサンでは,ほとんど低分子化されず,水熱条件下での分解は結晶性が大きく影響していることが明らかとなった.非晶性のキチン,キトサンの分解では,還元末端基の増大から考えて加水分解的であり,その水熱条件下での水が触媒として作用したものと考えられる.
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