インターメディリシン(ILY)のドメイン4(ILY-4D)の立体構造を、パーフリンゴリシンOの結晶構造を基にモデリングし、その分子形状を分析した。先ず分子の長軸端にある11mer領域ランダムループと、同族毒素に比べてILYに特徴的なC末端の突出ペプチド部分に変異あるいは欠失を導入した変異体を作成し、そのヒト赤血球溶血活性を比較した。11mer領域変異体の場合、活性低下が見られたが、3カ所もの変異を導入しても一桁程度の活性低下に止まっていることから、ここがヒト細胞膜のILY受容体との結合部位では無いことが考えられた。一方、C末端の3アミノ酸欠失変異体は活性が3桁以上も低く、また結合量も著しく低下していた。従ってこの領域がILYの細胞膜への結合に重要な箇所の一つであることが示唆された。次にILY4D外層部に位置する配列を持つペプチド9種類を合成し、ILYのヒト溶血活性におけるこれらの競合阻害性を検討した。11mer領域ペプチドは全く競合阻害を示さず、変異体での解析を裏付ける結果となった。C末端ペプチド及びそのペプチドと同一分子面に局在する3ペプチド共存下で活性を調べた結果、意外にも全く競合阻害活性が見られなかった。変異体での解析結果も考慮すると、C末端ペプチドはここ以外の構造と共同してILY受容体と相互作用している可能性も考えられた。さらにC末端ペプチドと逆分子面に局在する4種のペプチドについても同様に調べたところ、11mer領域ペプチドのN末端側に隣接するペプチドのみが低濃度で溶血活性を強く阻害した。またさらにそれと隣接したペプチドも弱いものの阻害活性を示した。以上の結果を総合すると、C末端ペプチドと逆分子面の11mer領域のN末端側に隣接したペプチド近傍がILY受容体との結合に重要な箇所であり、C末端ペプチドもその結合に補助的な働きをしている可能性が考えられた。
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