本年度は先ず、スペーサーを導入したインターメディリシン(ILY)の無毒性細胞膜結合ドメイン4(ILY4D)を細胞膜結合モジュールとして利用し、抗胎児性癌抗原(CEA)特異抗体とILY4Dの架橋体を結合した細胞をCEA陽性癌細胞に標的化できることを示した(論文印刷中)。また昨年ILY4D部分構造ペプチドによる活性阻害試験で反応阻害性ペプチドの同定に成功したが、その構造だけでは細胞膜への十分な結合親和性が認められず、より高次の構造がILY受容体との高親和性結合に必要な可能性が示唆された。そこで本年度はより高次構造が自然に近い実験系として、ILY(ヒト特異性有り)とストレプトリシンO(SLO)やニューモリシン(PLY)(ヒト特異性無し)のキメラ体を作成し、ILY4DのどこがILY受容体結合サイトかを検討した。その結果、ILY4DのC末端側56アミノ酸を持つPLYキメラ体において元来PLYにないヒト特異的活性が確認され、この領域内に受容体結合サイトが含まれることが確認された。この領域中の、SLOやPLY等のSLOファミリー毒素ではコレステロール結合部位と考えられるC末近傍のundecapeptide領域に相当する部位のILY配列をヒト特異性のないSLOやPLYと同じ配列に置換すると、コレステロール感受性を伴って他の動物細胞にも反応するようになった。しかしそこを特異的に化学修飾するとコレステロール感受性やヒト以外の動物での溶血活性が激減し、再度ヒト特異的活性を示すようになった。また同領域をILYの配列に置換したSLO変異体ではヒト特異性は見られなかった。従ってこの領域を除くC末端側56アミノ酸領域にILY受容体結合サイトがある可能性が強く示唆され(論文投稿中)、この結果と今後の結合領域構造の解析に基づいて細胞膜結合モジュールとして利用するILY4Dのサイズダウンを検討する予定である。
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