交付期間内において、インターメディリシン(ILY)とその近縁毒素の分子モデリングを行い、ILYの細胞膜結合部位の特定に重要となるILY構造情報を得た。この情報に基づいてILY細胞膜結合ドメイン4(ILY4D)の部分ペプチド(9-15mer)を多数合成してその競合阻害性を検討し、またILYと近縁毒素のキメラ体を作成してヒト細胞特異的結合に必要な最小構造の検討を行った結果、ILY4D後半56残基中(ただし11アミン酸領域は除く)に結合部位があることを特定した。しかし膜認識にはILY4Dの立体構造が必要で、その短鎖部分ペプチドやILY4DのC末56残基発現体は十分な結合親和性を示さず、細胞膜結合モジュールとしての利用は不適であった。一方、サイズは大きくなるが、ILY4Dの完全な構造を持つILY4D発現体及び分子内にSS結合を導入して立体構造を固定化した無毒性ILY全長組換え体(ILY-SS)の各N末端に架橋アンカー(Cys残基)を導入した細胞膜結合モジュールの作成を試み、2種類の長さのスペーサーを持つILY4D及びILY-SSモジュールの調製に成功した。ILY4D細胞膜結合モジュールを胎児性癌抗原特異抗体(抗CEA-Ab)の(Fab')2断片と連結した細胞膜結合型抗CEA-Ab分子とし、これを結合したヒト赤血球をCEA陽性癌細胞に作用させると赤血球が安定かつ高効率で癌細胞に特異的に結合することが確認された。従ってこれらの分子は活性化免疫細胞を用いた癌のミサイル免疫細胞療法に応用可能と考えられた。またILY-SSモジュールも同様に細胞膜改変技術に有用であることが示唆された。さらに両モジュールのN末端に望む蛋白質を融合蛋白質として発現できるベクターシステムも開発した。今後、これらを用いた癌の細胞ミサイル免疫療法や遺伝子治療用DDSの開発が期待される。
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