研究概要 |
本研究で得られた成果は以下のとおりである. 1.損失媒質内に存在する3次元不均質損失物体に微小ダイポールから放射されるマイクロ波領域のパルス波を照射し,観測点における電磁界の時間応答データからその物体の電気定数(誘電率,導電率,透磁率)の空間分布を再構成する像再構成アルゴリズム(3次元FBTS法)を開発した. 2.マイクロ波マンモグラフィ計測部のアレイ・アンテナのアンテナ素子はダイポール・アンテナを想定している.理想的な微小ダイポールに対して開発した3次元FBTS像再構成法をアンテナ長を考慮した3次元FBTS法に拡張した. 3.パルスの最高周波数を上げて,分解能を高めようとすると,推定領域の未知数が増え,像再構成の処理時間が長くなるとともに逆散乱問題特有の数値的不安定性が増してくる.多数の被検者に対する検査結果を処理するためには像再構成法の高速化が要求される.ここでは,未知数の増加を防ぐため,2段階の像再構成アルゴリズムを開発した.まず,合成開口処理あるいは遺伝的アルゴリズムを用いて正常組織とは異なる組織の有無およびその大雑把な位置・大きさを推定した後,その付近の小さな領域を推定領域として切り出し,その領域にFBTS法を適用して誘電率・導電率分布を再構成することによりがんであるかどうかを識別する方法について基礎的検討を行った. 4.円筒上にアンテナ素子を配置したアレイ・アンテナで囲まれた3次元物体の像再構成を数値シミュレーションし,アンテナの大きさを考慮した3次元FBTS像再構成法の有効性を確認した.また,平面上にアンテナ素子を配置したアレイ・アンテナで囲まれた物体の像再構成を数値シミュレーションし,合成開口処理あるいは遺伝的アルゴリズムとFBTS法との組合せによる像再構成法の高速化が確認された.
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