角膜内皮細胞は、角膜の透明性を維持するために、極めて重要な組織であるが、生体内では増殖をしない。内皮細胞が障害されると、角膜の透明性は損なわれ視力が失われる。我が国では、移植角膜が不足しており、培養角膜内皮が角膜移植に応用されれば、角膜内皮変性症、角膜内皮炎ほか、多くの角膜疾患患者に福音をもたらすものと考えられる。今回我々は角膜内皮細胞シートの開発、将来の移植応用実験を目的として、まず実験動物を用いて培養条件の検討を行った。 マウス、ラットから新鮮角膜を採取し、内皮細胞培養条件の検討を行ったP。近年狂牛病など人畜共通感染症の発症が問題となっているため、ウシ血清は用いず、マウスでは無血清培地、ラットでは無血清培地、または自己(同種)血清添加培地による内皮細胞培養を試みた。 ウシ胎児血清を加えなくても、其々内皮細胞の培養は可能であった。しかし、マウスでは、角膜上皮や実質と内皮細胞の分離が困難であり、特に角膜実質からの繊維芽細胞が培養内皮細胞中に混入して、内皮細胞単一のシート作製が困難な状態である。ラットにおいても同様に、培養角膜内皮細胞に繊維芽細胞が混入する部分が多く、シート作成の障害となっている。これは、角膜内皮細胞の基底膜であるデスメ膜と、実質組織の接着がヒトの場合より強固なためと、眼組織のサイズが小さく、分離操作が難しいためと考えた。 今後は、過去に角膜内皮細胞培養が報告されている、ウサギなど、大型動物を用いた角膜内皮細胞培養シートの作成も検討してゆきたい。
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