研究概要 |
NiTi合金は超弾性、形状記憶特性、高耐摩耗性などユニークで優れた機械的性質を示し、インプラント材料としての利用が望まれる。しかし、Ni含有量が多いために同イオン溶出が懸念され、一部の臨床応用を除き、広く実用化されるには至っていない。我々は同合金のカソード防食によるNiイオン溶出を防止し、生体適合性を向上させることを考案した。 上記の目的を達成するために、(1)金属Niの金属粉末、腐食液に対してL929繊維芽細胞、U937マクロファージを用いてNiの毒性試験を行った.10μm以下の金属粉末とそれ以上のサイズでは毒性の発現に大きな違いがあった。10μm以下の粒子は細胞が貪食可能で細胞体内に取り込まれると金属溶解が促進されることを各種粒径の蛍光ビーズを用いて観察した。(2)純Ni盤上に接着性細胞、非接着性細胞を同密度で播種し、接着性細胞が金属の溶出を促進させる作用があることを確認した。細胞接着のにでは金属腐食は促進されず、細胞からの分泌物か、または、細胞膜の電気化学反応が金属溶出を加速させることが示唆された。(3)TiNi合金のカソード防食に必要な印加電圧値を決定するため、擬似体液(PBS)中でTiNi合金試験片に一定の電圧を負荷しながら摩擦試験を行い,擬似体液中に溶出したNiイオンの量を測定し,カソード防食に有効な臨界印加電圧(最少電圧)と電流密度を決定した.一定時間、-0.5Vvs.SCE以下の一定電位を金属に付加し、印加後の溶液中のNiイオン濃度をICP分析し、カソード防食効果を確認した。
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