研究概要 |
動脈瘤の治療のために用いられるステントの流体力学的最適設計を目的として,嚢状動脈瘤モデルに対する三次元の数値シミュレーションを行った。ステントを動脈瘤の首部に挿入すると瘤内に血栓が生じ,動脈瘤の成長と破裂を防止することが可能となるが,空隙率の過小なステントは瘤内血流の停滞効果は大であるが,構造的剛性が強くなりすぎるなど瘤部以外の血管に副作用をもたらす。そこで瘤内拍動流に対する数値シミュレーションの結果を用いて,最適な空隙率(最大空隙率)を決定する方法を提案した。評価基準は瘤内壁におけるひずみ速度であり,この値より血栓の生成が判定可能である。そこで,ステント内挿を模擬した数値シミュレーションの結果より本方法の有効性を確認した。さらに,ステント内挿の有効性を実際に調べるためには,ステント部および瘤内の流れを実測することが必要となる。我々は半導体製造技術を用いた化学エッチングによる微細加工技術を用いて,外径100μmのカテーテル型LDVセンサーを開発しているが,このセンサーを用いるとステント線近傍および瘤内の血流速度の高精度測定が可能となる。しかし,センサーの存在自体が流れ場にじょう乱を与え,測定速度に誤差をもたらすため,このじょう乱の影響を調べておく必要がある。そこで,LDVセンサー回りの流れの数値シミュレーションを行うことにより,前述の誤差に対する評価を行った。その結果,センサー先端前方のセンサー軸上には,じょう乱の影響が最小となる最適計測点が存在すること,焦点距離(センサー先端測定位置)が200μmの場合の最適挿入角は0゜であること,および測定位置が壁面に近づくと測定速度は実際の速度より小さく測定される傾向があること等を明らか年した。
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