研究概要 |
リンパ系において,リンパ節を含むリンパ循環動態を定量的に評価するため,以下の研究を実施した。 1.輸入・輸出リンパ管を含むリンパ潅流標本を作成し,蛍光顕微鏡システム下でリンパ節内の流れを可視化した。その結果,分子量70kDの水溶性蛍光物質であるFITC-dextranが流入すると,リンパ節内の解剖学的構造に酷似した流路を反映したと思われる蛍光像が観察され,また,輸出リンパ管に流出した。一方で,粒径1μmの蛍光ミクロスフェアではリンパ節内でびまん状に分布した蛍光像が得られ,また,輸出リンパ管には流出しなかった。これらの結果より,リンパ節を含むリンパ循環系において,リンパ節に選択的物質輸送メカニズムが存在する可能性が示唆された。 2.リンパ系における物質輸送メカニズムの一つとして,リンパ管壁における水溶性物質の透過性機構を水溶性蛍光色素を用いて定量的に評価する実験系を確立し,リンパ管壁には水溶性物質に対する分子量依存性の透過性制御機構が存在することを証明した。さらに,このリンパ管壁の透過性機序にリンパ管内皮細胞が関与している可能性が示唆された。 3.Tumor necrosis factor α(TNFα)は,リンパ管壁における水溶性物質の透過性亢進に作用し,さらにこのTNFαによるリンパ管壁透過性亢進機序にリンパ管内皮細胞の細胞骨格タンパク質であるF-actinのRho-kinase依存性再配向が関与している可能性を示した。 4.摘出ラットリンパ節輸出リンパ管において,ATPはリンパ管の自発性収縮ポンプ活動の抑制因子となり,その作用機序に一酸化窒素とATP感受性K^+チャネルの関与していることを明らかにした。
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