シミュレータに用いる心臓モデルの形状は、従来、CG用の心臓形状ポリゴンデータから作成したものであった。しかし、患者個々の致死性不整脈の発生をより正確に予測するには、患者の心臓形状等の特徴をシミュレータに反映させる必要がある。より詳細なシミュレーションを行うために、心臓の形状およびその動きについてデジタルデータの取得を行った。一心拍周期分の心臓形状の空間的・時間的変化をMRI画像から手動により抽出し、再構成した。使用したMRI短軸断層画像は心室心尖部から心房上部まで24断面17時相分であり、True FISPの撮影シーケンスを用いた。心筋協会を抽出するために、各画像上で心房・心室・血管の内側・外側境界線上に点列を配置するエディタを開発した。また、上下の断面間で点列どうしをリンクさせる3次元エディタを開発し、心臓形状ポリゴンデータを構成した。再構成した形状を整形・後利用するために各種の処理を行った。 一方、電気的除細動メカニズムに関する研究として、Ruo-Ludy2次元バイドメイン仮想心筋モデルを構築した。使用した仮想心筋では線維方向が考慮され、さらに、バイドメインモデルであるため、仮想電極現象を意識したスパイラルリエントリーのコントロールの可能性を精査することができる。結果として、仮想心筋上に配置した電極刺激により、spiral waveのshiftやcaptureについて、一定の成果が得られた。スパイラルリエントリーのコントロールに対する可能性が示されたことで、新しい電気的除細動メカニズムの発見につながることが期待された。
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