研究概要 |
現在行為障害に発展する可能性の高いAD/HDの診断は,親や教師による行動評定の結果や行動観察など,さまざまな側面からのアセスメントをし,DSM-IVの診断基準と照らし合わせて行われる。しかし,行動評定では主観の入る可能性が否めず,客観的な評価方法が求められている。海外では持続的注意を測定する客観的評価方法としてContinuous Performance Tests(CPT)などの持続作業テストが開発,標準化されており,AD/HDのアセスメントの一つとして使用されている。CPTは他の認知的要因と混同することなく,不注意と衝動性を直接的に査定する唯一の心理学的測定法といわれている。しかし,医療機関など,普段とは異なる特別な場所で実施されるため,不安など他の要因が混入してしまう可能性がある。そこで本研究では,AD/HDの識別において,CPTに代わる持続的注意課題であるChildren's Checking Task(CCT : Margolis,1972)を参考にし,教室で集団実施することができる持続的注意テストの開発を試みた。再テスト信頼性の検討を行い,さらに本テストの妥当性の検証のため,担任による行動評価尺度,コンピューター版のCPTとの相関を検討した。また,本テスト結果の発達的推移を分析した。本研究は青森県,新潟県,富山県,石川県,長野県,東京都の公立小学校9校の2年生から5年生の27学級,計666名の児童を対象に実施した。児童の行動・学力評定は可能な範囲で担任が記入した(計484名)。 行動・学力評定に関しては,不注意に関する9項目の合計点,多動性-衝動性に関する9項目の合計点,学力,読解力に関するそれぞれの5段階評価との関連について分析を行った(有効データ数484)。本テストの脱反応数と誤反応数においては,全ての行動・学力評定と有意な相関が見られた。CPTにおける脱反応数は注意持続を,誤反応数は注意持続と衝動のコントロールの問題を測定すると言われている。本テストにおいては,脱反応数と不注意(r=.342),多動性-衝動性(r=.203)の相関に対し,誤反応数と不注意(r=.205),多動性-衝動性(r=.145)の相関は比較的低かった。
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