少年が犯罪や非行をして家庭裁判所で少年審判が開かれ試験観察となった際に、あるいは終局処分として保護観察となった際や少年院送致となり仮退院後の保護観察となった際に、自宅へ帰して保護観察を行った場合に親子関係の縺れなどからむしろ好ましくない結果がもたらされると思われるようなケースでは更生施設が利用される。この更生保護施設の将来の展望を把握するのが本研究の大きな目的である。 本年度は、男女それぞれの少年を受け入れている更生保護施設を訪問して施設長らにインタビュー調査を行った。その結果、更生保護施設は少人数で運営されているため、後継者が実質的に世襲されるような場合、保護観察官のOBが施設の長になる場合、地方自治体の退職者がなる場合などによって、その特徴と処遇が異なるため、これに基づいて類型化して施設と処遇について検討すべきことが判明した。 次に、非行少年に対する処遇の前提として少年犯罪の状況、少年犯罪者、非行少年への取り組みについてアメリカ社会問題学会で報告し、さらに、わが国の少年非行とそれへの対策ならびに処遇の現状についてまとめ、英語版の小冊子を作成して海外で調査を行うにあたって協力が得られやすい準備を整えた。しかしながら、アメリカ合衆国の元少年裁判所の裁判官などにインタビュー調査を行った結果、アメリカ合衆国の少年犯罪対策はリハビリテーションに主眼を置かないものに変化しており、今後の調査の方向としては、むしろ国内の状況についてより詳しく検討したほうが好ましい成果の展望がもたらされる可能性が高いとの予測がもたらされた。
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