研究概要 |
(研究目的)放線菌Streptomyces fradiae由来angucycline系抗生物質Urdamycin A(URD-A)の構成デオキシ糖であるD-olivose(D-oliv)とL-rhodinose(L-rhod)の4つの糖転移酵素(GT)に関する代謝工学的研究を展開している。当該年度、構成デオキシ糖の生合成に関わる遺伝子の破壊体から新規URD誘導体を単離、構造決定し、C-配糖化に関わるGTであるUrdGT2の基質認識に関する以下の新知見が得られた。 (今年度の業績)構成デオキシ糖を生成する酵素遺伝子群、urdZ1,urdG, urdH, urdZ3,urdQ, urdR, urdS及びurdTはurdGT2とともにゲノム上で約8.7kbのクラスター構造を有し、UrdRはデオキシ糖4位の還元酵素と推定された。UrdRのフレームシフト変異株RN-435の代謝産物を分析することにより、URDアグリコンC-9位にD-rhodがC-配糖化されたURD-Mが同定された。野生株においてD-olivのC-配糖化酵素として機能するUrdGT2の基質特異性が比較的低く、D-rhodも認識したことがURD-M生産に繋がったと判断した。今回RN-435変異株代謝物をさらにLC/MSを用いて分析したところ、分子量698と推定される2種類の新規URD代謝産物が見出された。各種スペクトル分析により構造決定したところ、URD-Mの9位D-rhodの4'水酸基がL-rhod化されたURD-R及びURD-Rの9位D-rhodがL-rhodとなったURD-Sであることが判明した。この結果、UrdGT2はその基質となる各種ヌクレオチド糖供与体プールが適切に供給されれば、D-,L-双方のrhodinoseをC-配糖化する能力があることが判明した。C-配糖化を含む代謝工学的応用研究に向けた重要な知見である。
|