研究概要 |
毛髪の分子診断のモデル実験として、各種ブリーチ及びパーマ処理した毛髪モデルを調製した。その形態,明度/彩度,手触りによる官能試験,分子生理学的な分析を実施して比較検討した。本プロジェクトの目玉のひとつである信大法(毛髪からの新規蛋白質抽出法)での抽出速度と官能評価との間に強い相関性があることを見出している。今まで、経験に頼っていた官能評価を科学的に分析できる可能性が高いため、2002年の感性工学会の大会で発表するとともに、「感性工学研究論文集」に投稿中である。 フィルムを応用面に利用するために、アルカリホスファターゼの導入を試みた。この酵素は、多くの組織・細胞に分布し、かつ、酵素抗体法などのマーカーに使用される汎用性の高い蛋白質として知られている。変性剤が入っている条件下で酵素活性が約12%保持した毛髪フィルムの作製に成功した。乾燥条件下では2週間以上の保存が可能で、溶液中においても72時間後に約25%が遊離することから除放性を有する材料となる可能性が示された。この結果をまとめ、2003年の高分子学会年次大会で発表予定である。 毛髪以外の硬ケラチン含有生体材料として爪を選択して、信大法及び藤井法(新規のフィルム作製法)を適用した。この結果、毛髪同様に効率のよい蛋白質抽出に加え簡便にフィルム作製が可能であることを見出している。 ケラチン加工品の適用範囲を広げるために、繊維への毛髪蛋白質によるコーティング化を試みた。藤井法を応用して簡便にコーティングできる方法を開発した。低濃度では、糸の中に、高濃度では、糸と糸の間をケラチン繊維が架橋する様式で導入されていることを観察している。現在、投稿中である。 以上、本年度は加工技術に重点をおいて研究を遂行した。これらの結果を踏まえて、次年度は生理機能を付随した応用製品の開発につなげていきたい。
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