研究概要 |
浅皿培養装置を改良してバクテリアセルロース(BC)をフィルム状で直接巻き取る装置を開発し、巻き取り速度等最適生成条件の検討を行った。加延伸型浅皿培養装置を用いた際の収率は静置培養より0.5〜1%程度向上させることが出来た。GlcNAc系の培地で培養した場合においても、収率はGlc単独培地に比べて低下する傾向は見られず、ほぼ同程度であった。以上の結果により、酢酸菌が好気性菌であり培地表面に対する酸素の接触量が静置培養よりも格段に増加することが影響していることが言える。さらに、延伸をかけない無延伸型浅皿培養装置では、4〜5%の収率を得ることが出来た。GlcNAc系培地においても4%を下回ることはなかった。 酢酸菌によるバクテリアセルロース(BC)生合成を炭素源としてリン酸化キチン及びそのオリゴマーを用いて行った。すでに明らかにしているように酢酸菌はN-アセチルグルコサミン(GlcNAc)を炭素源としてGlcNAc残基を数%含有した多糖を生成すること、BC生合成においてグルコース(Glc)及びGlcNAcは代謝の最終段階においてリン酸化合物となるが6-P-GlcNAcの重合体がリン酸化キチンであることから本実験を行った。さらに、キチン化合物はリゾチーム等の酵素で加水分解されることから、重合体やオリゴマーのような高分子量体であっても酢酸菌に取り込まれることが期待される。 炭素源としてグリセロール、グリセルアルデヒドなどの三単糖であるグリセロール誘導体を用いて、酢酸菌による機能化BCの生合成を検討したところ、グリセロールを用いた場合収量の向上と長期間に渡る培養持続が達成できた。さらに、糖の生合成経路を明らかにする目的で2位及び1,3位に^<13>Cを有するグリセロールを用いて産生した多糖の^<13>C-NMRスペクトル測定を行った結果、グリセロール誘導体が一旦解糖された後、再びグルコースへと再構築されることが示唆された。
|