1.日本とフィンランドにおけるケアワーカーの養成学校を視察し、教育方針やカリキュラム、テキスト等の資料収集を行った。 2.フィンランドでは他の北欧諸国と同様、高齢者介護のマンパワー不足が深刻化している。養成学校では若者が集まらず定員割れのところが多い。ケアワーカーの質的・量的養成問題の新しい段階にあることが確認された。それへの対応策の1つとして、資格の統合による新しい資格の創出(ラヒホイタヤ)、在宅ケアにおける訪問介護と訪問看護の一体化、医療現場における医師の仕事の看護師への委譲など、少ない人数の中での専門性のアップが目指されている。 3.日本では、当初に比べ人気に翳りが出てきたとはいえ、養成校の定員割れは深刻化していない。むしろ養成数に比べ、労働市場が狭いという問題がある。また、介護福祉士とホームヘルパー、ホームヘルパー内における階層的養成の結果、ホームヘルパーの雇用の不安定、低賃金という状況は全体として日本のケアワーカーの社会的評価を低めている。ただし、ヘルパー3級の養成の廃止などランクアップの試みも行われてきている。施設や病院においては看護師と介護士のそれぞれの仕事、とくに患者とのかかわりにおける役割の明確化が問題になっていることもあきらかとなった。 4.フィンランドでも日本でもケアワーカーのジェンダー・イシューは明確ではない。むしろ北欧ではリストラの中で女性たちはケアワークの仕事の縮小の問題が男性の参入問題より優先課題である。しかし、低い資格のホームヘルパー養成の廃止とラヒホイタヤへの統合にみるように、専門性の上昇、資格の高度化は女性職としてのケアワークの地位上昇に繋がる効果を持つ。 5.一方日本では、ホームヘルパーの研修養成と「資格化」されない仕事が明確に残されており、その地位や労働条件はケアワーカーの中でも低くとどまっているため男性の参入が妨げられていることが判明した。
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