研究課題
基盤研究(C)
本研究は、高齢者の介護を担うケアワーカー(施設および在宅)の養成過程に注目し、「伝統的女性職」ゆえのケアワークの社会的評価の低さと要介護者の増加によって要請される「専門性の獲得」「質の向上」という、いわば2つの矛盾した規定要因のなかで、その理念や教育内容がどのように変化してきているのか、はたしてそれはケアワークにおけるジェンダー不平等を解決する手段となっているのか、について明らかにしようとするものである。2002年から2006年の3年度にわたり以下の分析を、主にジェンダー視角から行った。1.日本のケアワーカーの養成政策とその変遷の分析2.ケアワーカーの養成校における学生指導と教育課程の分析3.ケアワーカーの不足と質の低下に対する先進福祉国家の取り組み:スウェーデンとフィンランドの調査以下は、調査分析から明らかになった点である。1.日本のケアワーカーの養成政策は当初から、ケア役割、教育内容、養成期間や時間などにより階層的に制度化され、より医学的知識が高いほど専門性があるとされ、従来、女性が家庭内で担ってきた高齢者の身辺の世話・家事は専門性の低い労働と位置づけられ、ケアワーク市場での地位や賃金の格差が生み出された。2.介護保険制度施行後は、民間事業者の参入や擬似市場化におけるケアサービスの提供により、専門性の養成そのもの、あるいは専門性の現場での発揮が依然より困難となる傾向も見られる。3.養成校や研修コースのカリキュラムはジェンダー中立であっても、学生指導や指導方法などの隠れたカリキュラムにジェンダーバイアスが見られる。4.大量のケアワーカーの不足が予想される北欧では、ケアワークの専門性を高め魅力のある仕事にするためのプロジェクトが行われている。とりわけフィンランドでは、準看護師とホームヘルパーの資格の統合や看護師とホームヘルパーの現場での仕事の統合が行われた。このように「女性職」として確保されてきたケアワークの社会的地位の維持・向上がジェンダーより優先課題である。
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すべて 雑誌論文 (6件)
家族社会学研究 第16巻第2号
ページ: 36-45
Japanese Journal of Family Socioloy Vol.16-2
フェミニスト福祉政策原論(杉本貴代栄編著)(ミネルヴァ書房)
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The Principles of Feminist Welfare Policy (23-42). (Sugimoto, K.(Ed).)(Tokyo Mineruva Shobo.)
労働社会学研究 4号
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The Japanese Association of Labor Sociology.