本研究の目的は、第二次世界大戦後の日本および国際的環境における家族計画推進の歴史的過程を明らかにし、あわせて日本と開発途上国における家族計画の関係、および家族計画の導入と普及が女性に対してどのような意味を持ち、いかなる変化をもたらしたかを、ジェンダーの視点から分析することにある。 研究2年目である本年度は、日本の戦後家族計画運動の展開とそれが日本社会にどのような影響を及ぼしたかを明らかにすることを中心テーマに、初年度に引き続いて資料の収集に努めるとともに、すでに入手した資料とあわせて分析を行い、その結果の一部を論文「反転した国策:家族計画運動の展開と帰結」にまとめ、『思想』955号、2003年11月号において発表した。さらに2004年2月19日、国立社会保障・人口問題研究所において、「戦後日本の家族計画の軌跡」と題して研究報告も行なった。 次に、日本の家族計画を国際的文脈の中に位置づけるための準備作業として、主に二つのことを行った。第一は、国会図書館憲政資料室所蔵のマイクロフィッシュ版GHQ関連文書を解読し、GHQおよびアメリカの対日本および対アジア人口政策についての分析を進めたことである。第二には、ポピュレーション・カウンシル、国際家族計画連盟(IPPF)をはじめとする国際的家族計画援助組織に関する資料、および国際的家族計画援助と途上国の人口政策に関する先行研究の収集を行なった。さらにこれらの資料・文献を研究して得られた結果を、2003年6月21日、国立民族学博物館における「世界における「白人」の構造化」研究会(代表者:藤川孝男)において、「家族計画の政治学:避妊技術の開発と布置」と題して発表した。 今後は、最終年度にあたる来年度に向けてさらに調査・研究を進め、これまでに行なった研究と合わせて成果のとりまとめに向け、準備を進める予定である。
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