本研究の目的は、(1)第二次世界大戦後の日本および国際的環境において家族計画が推進された歴史的過程を明らかにすること、(2)日本における家族計画の成功が、どのように他の国々、とりわけ開発途上国における家族計画の導入と実施に関連していたのかを追究すること、および(3)日本と途上国における家族計画の導入と普及が、生殖の一番の当事者である女性にとってどのような意味を持ち、いかなる変化をもたらしたかを、ジェンダーと権力関係の視点から分析することにあった。 これまで14、15年度を通じて日本および国外の関連資料・文献の収集を行うとともに、それらの分析を通じて得た知見を研究報告および論文の形で発表し、それらに対する批判やコメントを参照しながら考察を進めてきた。最終年度にあたる本年度もこうした作業を継続して行った。その結果、関連資料・文献に関してはかなりの程度まで収集と整備を進めることができた。また、これらを活用した分析を通じて、明治以降、1960年代に至るまでの日本の政治的・社会的環境の中での人口政策の変遷と戦後家族計画運動の実態、および国民、とりわけ女性たちがそれらに対してどのように反応したのかについて、かなり明らかにすることができた。その成果は研究成果報告書に反映させるとともに、今後本のかたちでまとめて出版することを計画している。 しかし途上国の家族計画援助における日本の役割に関しては、資料・文献の収集はかなり行えたものの、いまだ全体像を把握するには至らなかった。それは、この問題の背後にはアメリカの世界戦略など、当初の予想以上に複雑な国際政治状況が存在していたことが判明したためである。
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