1 理論・方法論の検討による成果 地域リーダーのリクルートに関する既存研究としてCommunity Power Structure理論があるが、とくに女性リーダーを対象とする場合、地域社会において女性をとりまくフォロワーおよび既存(主に男性)リーダーの女性リーダーに対する認知・感情・評価に注目する必要があり、政治文化論的アプローチの有効性が明らかとなった。 また、女性のフォーマル・リーダーの絶対数が少ないこと、調査対象者の価値観にせまる必要があること、地域の歴史的背景を明らかにする必要があることから、聞き取り調査を中心とする質的データの収集に意義があることが認められた。 2 資料・聞き取りデータの分析による成果 (1)農業地域:長野県の事例から、農村生活マイスター認定制度や生活改良普及員の指導を背景として、農村女性がグループ・リーダーから農業委員、地方議員へと意思決定に参画していくリクルートメント・ルートが定着しつつある点が注目された。それは、農村女性を個(私)領域から共同領域へ、そして公共領域へと位置づけていく過程を意味しており、地域活性化・地域文化の創出のメカニズムの基層をなすことが明らかとなった。 (2)漁業地域:広島県尾道市の漁業地域では、漁業協同組合と水産改良普及員との効率的連携によって女性グループの活動が安定していた。また、同県大野町の漁協理事の女性たちは、漁場が荒廃するなかにあって地域特産物の販売に力を入れていた。さらに三重県御座では、地域衰退が著しいなか若手の女性リーダーが地域活性化を模索していた。このように沿岸漁業の新しいあり方が漁村女性により展開されつつあることが明らかとなったが、農業地域とは異なる価値指向については今後の課題となった。
|