本年度は、事例研究を中心に行った。これまで、知的障害を持つ自閉症児の母親、血友病者の母親、そして精神障害者の母親に、現在までの障害児をめぐるライフヒストリーを自由に語ってもらう手法で面接調査を行った。親たちのこれまでの「語り」を検討すると、以下の4つの知見が注目される。まず、子の自立と障害の受容について。親自身が子どもの自立を促す対応をするには、子どもがもつ「障害」の事実を肯定的に受け止める必要があるが、1)障害が目立ち方によって、また2)障害の事実をいつ知るかによって、親自身の障害の受け止め方に違いがある。他者との比較でより明確な違いが見られる場合、親自身に覚悟が生まれ、社会生活をしていくための前向きな対応を生み出す傾向がある。病気など、障害が目につかない場合は、スティグマもあって周囲に打ち明けず秘密にすることが多く、その結果、親子密着度が高くなり、子どもの社会性が低くなる傾向があり、子の自立にとってマイナスとなる。精神障害の場合、早くても思春期など中途で診断を受けることが多く、本人だけでなく、親自身も「障害」を受け入れることができず、社会生活について前向きに考えることが難しい。3)子どもの社会性の高さは、親が子どもを自主性が備わるよう育てるか否かと関わりがある。また、4)子どもが自分自身の障害を受け入れる程度は、親が障害を受け入れる程度と関わりがあり、親が障害を受け入れていない場合、子どもも白分の障害を受け入れることができず、親への甘えが見られ、自立生活への動機付けが難しい。
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