研究概要 |
本年度は、課題研究の最終年度に当たり、前年度に引き続き、聞き取り調査を行うとともに、先行文献による研究、またこれまでのインタビュー調査をふまえ、研究目的に沿って分析をした結果をもとに研究のまとめを行う。 本研究は、既に自立した障害者および思春期を過ぎた障害をもつ子の親たちから聞き取りを行い、その語りをジェンダーの視点から分析し、以下の点を考察することを目的とした。 1,親にとって、親子関係での問題、とりわけ父親、母親との共通の悩み、違いを明らかにしていく。 2,さらに、父親、母親に、「障害児をもつことの意味」について語ってもらい、その語りを分析し、「障害」を通してみた親子関係の意味を考察する。 3,親たち、とりわけ母親の自立について考察する。障害者の自立が「家族への囲い込み」を解き放つということは、育児介護を自らの責任としてきた母親自身も自立し始める。障害者の自立と母親の自立との関連を探る。 4,障害者の自立のために、どのような親子関係が形成されることが望ましいのか、そのための社会的サポートはいかなるものが必要かについて明らかにしていく。 本研究から、示唆される点は、親がもつ障害者観により、本人の自立に与える家族がもつ地域関係のあり方に影響を与えること。また、本人が地域自立するための支援者に親となるかどうかに影響を与えること。そして、親には明らかなジェンダー差があり、母親は、「産む性」であることと「育てる性」であることから、我が子が障害をもったことに対し、大きな責任をもつ。それに対して、父親が、子どもの養育に関わるには、働き方と大きく関わり、養育に関わるには、比較的自由な時間をもつことのできる仕事であるかどうかがもっとも大きな条件となる。ただし、父親、母親の条件の違いによる結果が、本人の地域自立生活に肯定的な影響を与えるかどうかは、親の障害観や本人の障害の程度、地域の学校からのサポートをえられてきたかどうか、そのことによって、親自身が自らの障害観の変革をしたかどうかによる。
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