本年度は、「中東イスラーム諸国におけるマイクロクレジット(以下MCと記す)とジェンダー開発に関する人類学的研究」のプロジェクトの1年目であるので、まず基礎作業として、関連文献の収集を行い、読み込み作業から研究を開始した。関連文献としては、MCは、中東北アフリカ各国で、社会・経済開発や貧困政策として推進されているばかりでなく、グローバル化に伴う世界規模での貧困格差是正の一環として、国連開発計画(UNDP)や世銀・IMFなど、国際機関レベルでも推進されていることから、それらの政策に関する文献研究も行った。 2002年11月10-13日にはニューヨークにおいて約100ヶ国から2000人ほどが出席して開催されたMCサミットに参加し、MCの普及状況やその過程での各地域各国での問題点や課題などの、現状把握に努め、また各国政府関係者・活動家たちと意見・情報交換を行い、日本の国際協力の在り方についても検討した。 2003年2月15日〜3月24日にかけては、これまで主に調査研究を行ってきたチュニジア・モロッコにおいてと、加えて今回初めてモーリタニアにも入国して現地調査を行った。具体的には、MC融資に携わっている政府諸機関や金融機関、NGOなどを訪問し、その活動についての説明を受けるとともに、統計資料などを入手し、現場でのインパクト調査として、聞き取り調査を行った。聞き取りは、約80人ほど融資受益者のほかに、プロジェクトを推進している組織スタッフ約30人ほどをも対象として面接調査のかたちで実施した。それらの調査からは、同じくMCとはいっても、国家・地域・団体により、融資条件やサービス内容、ターゲット対象や目標が異なり、実態の多様性が確認された。なお、本年度の研究調査の成果については、目下、収集資料を整理し、学会誌掲載用の報告文を準備中である。
|