4年間の研究プロジェクトの最終年となった平成17年度には、これまでの調査研究の成果をまとめるかたちで、研究論文を幾つか発表した。ひとつは、「マグリブ三国におけるマイクロクレジットの普及の背景とその現状-開発とジェンダーの考察にむけて」と題したもので、加藤博(一橋大学教授)編の『イスラーム地域研究叢書(6) イスラームの性と文化』(東大出版会)に所収されたものである。この論文では、マイクロクレジットの普及の背景には、単にグラミン銀行などの成功だけでなく、1990年頃から「開発」をめぐるパラダイムが経済成長から貧困削減へと大きくシフトしてきた動向があったことを考察した。また本科研の中間報告書を平成16年3月に既にまとめたが、それはチュニジアとモロッコの調査成果を主としていたため、16年度のアルジェリアでの調査を基にした報告論文を「アルジェリアにおける貧困・失業削減政策としてのマイクロクレジット・プログラムの現状とその問題点」としてまとめた。これは『桜美林大学・国際学レヴュー』(3月刊行)に掲載予定である。なお、これまでの既刊および近刊の論文や報告書を合わせて加筆修正を施し、一冊の著書としてまとめ、刊行する予定があるため、再度、最新の情報資料収集のために、06年2月〜3月にはモロッコとアルジェリア、チュニジアで追加調査を行う予定である。これらを踏まえて、来たる5月開催の文化人類学会の年次大会では口頭発表も行う予定である。その他、社会開発を推進しているアルジェリアのアラウィー教団にも関心をもち、その調査も継続しており、この教団に関する翻訳や論文執筆などを行い、発表した。
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