◇方法◇ 女性の財産と相続について、わが国の70代・80代女性を主な対象とし(1)相続の経験と意識に関する先行研究の整理(2)大正生まれ及び昭和一桁世代の女性に対するインタビュー調査(3)全国消費実態調査による高齢女性の資産所有実態分析(4)相続税・贈与税制度および相続法の変遷の影響検討の方法により研究を実施した。 ◆結果◆ ◆1)我が国で勤労者世帯の相続が研究テーマとなったのはバブル経済の進行の時期である。それ以降の相続調査では、女性と財産という問題意識がみられないものが多い。数少ない既存のジェンダー視点をもった調査「生命保険文化センター調査」、「東京女性財産調査」から女性の資産形成と世代内移転・世代間移転における両面からのジェンダーについて整理した ◆2)大正6年〜14年生まれの女性と昭和一桁世代の女性を対象とした個人史インタビューからは、戦中の特異な配偶者選択環境、戦後の民法改正、高度経済成長の影響などによって、親からの相続や配偶者からの相続経験を含め、女性の財産所有環境が特に不動産をめぐって変化してきたことが明らかとなった。また公的年金の影響もみられた。 ◆3)全国消費実態調査における高齢女性の資産保有状況では、女性高齢者に資産保有層がみられる。それらの資産が、女性個人の所得から形成されたものか、親からの相続、配偶者からの相続、によるものかを考察したい。さらに年金制度や税制との関連の研究も必要である。 ◆4)現在は平成15年税制改正による相続税・贈与税に導入された相続時清算課税制度が、女性の財産所有に及ぼす影響を考察することに焦点を絞って分析を進めている。
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