大学においてセクシュアル・ハラスメント問題への取り組みが進行する一方、大学が問題解決を図り処理が行われても、被害者・ハラッサー(セクシュアル・ハラスメントを行ったとされる者)双方にとって「問題解決」に関する不満が残りがちであるのが現状である。本研究ではとくにハラッサー側の事態の受け止め方、すなわち「意味世界」を理解することでセクシュアル・ハラスメントの真の問題解決に近づくことをめざし、とくに本年は、以下のことを行って、大学におけるセクシュアル・ハラスメント対策の現状を把握し、問題処理が後のトラブルを招いたケース、すなわち処理についてハラッサー側の納得が得られなかったことが明らかなケースをいくつか選択して調査を行った。 (1)各大学(追手門大学・関西学院大学・金城大学・一橋大学・同志社大学ほか)でセクシュアル・ハラスメント対策に関する講演を行い、その際セクシュアル・ハラスメント対策担当者より、取り組みの進行状況について聞き取りを行った。とくに一橋大学においては、02年にセクシュアル・ハラスメント問題で懲戒処分を受けた教官より意見を聞くことができた。 (2)これまでの大学におけるセクシュアル・ハラスメント処分事例について、新聞・雑誌報道を中心に情報収集した。 (3)(2)のうち、とくに、ハラッサーによって不服申し立て・反訴が行われ、紛争が継続している名古屋大学の2件の事例について、大学対策担当者より聞き取りを行うなど、情報・資料の収集を行った。 (4)アメリカの大学におけるセクシュアル・ハラスメント事例について、処理と紛争の経過に関しての聞き取り調査を行うとともに、文献調査を行った。
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