建築・都市計画分野でのジェンダー・エンパワーメントに関する研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14594028
• 研究機関: 平安女学院大学
• 研究代表者: 室崎 生子 平安女学院大学, 生活環境学部, 教授 (90089128)
• 研究分担者: 上野 勝代 京都府立大学, 人間環境学部, 教授 (90046508) ; 松尾 光洋 平安女学院大学, 生活環境学部, 助教授 (90249376) ; 吉村 恵 平安女学院大学, 生活環境学部, 助教授 (20227002) ; 小伊藤 亜希子 大阪市立大学, 生活科学部, 助教授 (90257840) ; 中島 明子 和洋女子大学, 家政学部, 教授 (30113294)
• キーワード: 女性 / 建築技術職 / イギリス / フィンランド / ジェンダー / エンパワメント / 男女差

研究概要

本年度は、昨年の都道府県調査に追加して、東京23区を対象に、建築・都市計画分野における専門職比率、昇格実態などに関する実態調査を実施し男女差の実態を把握した。
また、国外比較事例として、今年度はジェンダー開発指数GDIが11位の日本とほぼ同じ位置にあるものの(12位)、ジェンダーエンパワー指数GDMでは日本の31位より高い16位にあるイギリス、GDIが9位、GDMが4位のジェンダーエンパワメントにおける先進国フィンランドを対象とし、現地ヒアリングと資料収集をおこなった。
イギリスにおける建築・都市計画分野への女性の進出は、1898年、RIBAへの女性会員の登録にはじまる。女性運動第二期以降では、女性のエンパワメントを射程に入れた建築計画やコミュニティデベロップメントを掲げたMATRIXや女性デザインサービス(WDS)などの専門家組織が設立された。現在の女性の地位について、建築課程の入学者およびARB登録者人数における女性の比率を見ると、双方とも1980年代から上昇し、女性の高学歴化が推察される。しかし前者と後者を比較すると1980年代から一貫して後者が20ポイント以上低く、女性の労働環境が未整備なことが看取される。ただし、2002年時点ではARBで13%,、RIBAで11%、教職が23%で、日英を比較すればUKがいずれも高い。
フィンランドでは、建築・都市計画分野における女性の活躍は1890年の第1号にはじまり、はやくから先進的であった女性政策だけでなく、1970〜1980年代に進んだ福祉政策によって働く環境は整備され、大学教育をうける、行政で働く、建築家になるという面ではほとんど差が無いといってよい。しかし、SAFAで役職に就くことや、賃金面ではやや、最終段階のポストでの差が生じている。また、他の比率からして、大学教員の女性比率が非常に低い。これは女性の方が作品を作るチャンスが少なく有名な建築家になりにくい現状の反映である。

研究成果

• [文献書誌] 小伊藤亜希子, 上野勝代, 中島明子, 松尾光洋, 室崎生子: "都道府県の建築技術職野現状-建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメントその1-"2003年度日本建築学会大会梗概集. F-1. 1261-1262 (2003)
• [文献書誌] 中島明子, 小伊藤亜希子, 上野勝代, 松尾光洋, 室崎生子: "韓国の建築・都市計画分野における女性-建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメントその2-"2003年度日本建築学会大会梗概集. F-1. 1263-1264 (2003)
• [文献書誌] 中島明子, 小伊藤亜希子, 上野勝代, 松尾光洋, 室崎生子: "東京都23区の建築技術職野現状-建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメントその3-"2004年度日本建築学会大会梗概集. (2004)
• [文献書誌] 浅野智子, 小伊藤亜希子, 上野勝代, 中島明子, 松尾光洋, 室崎生子: "イギリスの建築・都市計画分野における女性-建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメントその4-"2004年度日本建築学会大会梗概集. (2004)
• [文献書誌] 室崎生子, 浅野智子, 小伊藤亜希子, 上野勝代, 中島明子, 松尾光洋: "フィンランドの建築・都市計画分野における女性-建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメントその5-"2004年度日本建築学会大会梗概集. (2004)
• [文献書誌] 小伊藤亜希子, 上野勝代, 中島明子, 松尾光洋, 室崎生子: "建築・都市計画分野におけるジェンダーエンパワメント-自治体に働く建築女性の現状-"日本都市計画学会. (2004)