研究概要 |
人工林、特にヒノキ一斉林では、樹冠の閉鎖が進むと下層植生が消失し、土壌の表面浸食が起こることが知られている。このような林地では、降雨時に容易に地表流が発生し、土壌浸食が発生するのみならず、ピーク流量が増大するために下流の洪水を引き起こす可能性もある。さらには、土壌の保水能力は低下し、渇水期の流量は減少するであろう。そこで本研究では、水流出特性の変化を明らかにするために、実際に林床が裸地化したヒノキ林において、小流域を複数選定し流出特性について調査を行い、ヒノキ人工林の流出特性に対する影響を評価することを目的とする。 調査地域は、三重県大宮町のヒノキ林である。ヒノキ人工林において、施業履歴の異なる林分のなかから、植栽密度および相対照度、林床における被覆の程度を測定し、その状況の異なるプロットを選定する。試験プロットは3カ所設け、降雨・水流出量を自記し、降雨時における水流出を自系列的にとらえた。また、林内からの土砂流出も測定した。その結果、流域のサイズによって、流出率に違いが見られた。また、降雨中のハイドログラフの分離を行ったところ、流出の約40%が降雨起源であることが明らかになり、ヒノキ林の林地においては、降雨が直接流出する割合がかなり高いことが明らかとなった。 流域からのCs-137流出量濃度の測定により,表面流起源を示す高い濃度のCs-137が検出され,また,斜面においてCs-137の減少が顕著であることから,表面流出がヒノキ人工林において広範に生じていることが明らかとなった。
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