生体に含まれる微量金属イオンは酸素運搬、電子伝達、酵素活性の制御、情報伝達等の重要な生理機能に欠かせない。多様な生命体の進化と金属イオンの利用形態の関連は強い関心を集めている。本研究はスジキレボヤの高選択的濃縮機能の中心的役割を担う「バナジウム結合タンパク質(vanabin)」を指標にして、バナジウム濃縮に関するタンパク質や遺伝子がアスキジア科のホヤに特有のものなのか否か、エラコにも存在するのか否か、バナジウムを濃縮しない生物にも存在するのか否か、もし存在するとしたらどのような機能を担っているのかを明らかにし、金属イオンの利用形態の生物多様性と進化という新しい研究分野を拓くことを目指す。 1.日本沿岸各地のホヤを採集しゲノムサザン解析を行なったが、この手法ではvanabin相同遺伝子を同定することは出来なかった。 2.バナジウム固定化アフィニティカラムクロマトグラフィによって、環形動物エラコのバナジウム親和性タンパク質を同定した。 3.カタユウレイボヤのゲノムおよびESTデータベースから5つのvanabin相同遺伝子を同定した。それらはゲノム上の1カ所にクラスターを形成していた。組み換えタンパク質を作成し、バナジウムと親和性を明らかにした。 4.ユウレイボヤのゲノムデータベースからvanabinと相同性の高い遺伝子を6個同定した。それらはカタユウレイボヤとは異なり、ゲノム上の3カ所に分散して存在することが示唆された。
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