研究概要 |
本年度については,特にケゼニゴケ倍数体系列関係の研究をおこなった.手法としては,1)形態形質の解析、2)染色体数、核型の分析、3)アロザイム多型による集団間分化の解析、4)葉緑体DNAをもちいている. 全国各地においてサンプリングをおこない,各集団についてそれぞれ30個体を目標としてできるだけおおくのサンプルを採取した.ケゼニゴケは無性的に繁殖する可能性があるため,各サンプルを採取するにあたっては,同一のgenetから複数のサンプルをあやまって採取することをさけるために,各パッチからおよそ5cm×5cmのサンプルを1点のみ採取した.ケゼニゴケは一般に直径数十センチから数メートル規模のパッチを構成することがおおい. 少なくないケゼニゴケ集団において,1倍体と倍数体の両方が混成しているが,今回の研究に用いた材料は、後述のように調査サンプルを数週間培養した後にその染色体を観察することによって確定した。 採集した各サンプルは,4つに分割し1)形態の観察,2)染色体数の確認,3)アロザイムについて調べた.同時に,葉緑体DNA上の,atpB-rbcL遺伝子間領域の塩基配列情報の解読をおこなった.その結果, 1.日本の1倍体と倍数体の間には直接的関係が存在しないこと 2.少なくとも種のレベルで識別可能な3種の1倍体が存在すること がわかった. また,これと並行して,次年度から解析を予定している,オオカサゴケならびにフジノマンネンゴケ,コウヤノマンネンゴケの産地に関する情報を各地標本館所蔵の標本を検討することで情報の集積を行い,またそれぞれ2カ所においてサンプリングをおこなった.
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