研究概要 |
昨年度に引き続き,ケゼニゴケ倍数体系列の研究をおこなった.手法としては,1)形態形質の解析,2)染色体数の確認,3)アロザイム多型による集団間分化の解析,4)葉緑体DNAの解析をもちいている. 今年度は,日本国内だけではなく台湾においてサンプルリングした材料を解析して,1倍体と2倍体における形態分化と生育地の嗜好の分化を解析し,結果を論文として報告した(秋山他2003) 各採集地におけるサンプリングは,発見した集団についてそれぞれ30個体を目標としてできるだけ多くの個体を採取した.ケゼニゴケは無性的に繁殖する可能性があるため,各サンプルを採取するにあたっては,同一のgenetから複数のサンプルをあやまって採取することを避けるために,各パッチからおよそ5センチx5センチのサンプルを1点のみ採取した(ケゼニゴケは一般に直径数十センチから数メートルの規模に達するパッチを構成することが多い). 台湾での解析では,1倍体と2倍体が混生している集団が2カ所でみつかった.形態は共通しており外見からは見分けることが困難である.しかしながら,葉緑体DNAのrbcL-atpB遺伝子間領域の塩基配列の比較からは,1倍体と2倍体は少なくとも葉緑体に関しては由来が異なることが判明した.またアロザイム解析からも,両者はそれぞれ固有の対立遺伝子を保有しており,1倍体から直接に2倍体が生じたものではないことが示唆された. そのほか,ビルマ,タイ,マレーシアからサンプルをえられたDixonia thamnioides(蘚類)を使って,地理的に離れた場所から見つかった同一種が形態では地域差を有するが,rbcL塩基配列においてはほとんど分化していない事例を報告することが出来た.
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