研究概要 |
本年度は,(1)昨年度に引き続き先行研究を検討した他,(2)研究成果の報告を行った。このうち,(2)の概要を下記の(1)(2)に示す。 (1)「自律協働体系としてのボランタリー組織」(公益法人研究学会第7回大会) ボランタリー組織の会員は,自己の本務に従事(自律)する傍ら,集合的な目的達成のために貢献(協働)するという二重の役割を負っている。ボランタリー組織は,自律領域と協働領域の2つの副領域から構成された自律協働体系として概念化される。会員が協働領域へ関与することで獲得する誘因は,(a)協働領域内でのインハウス誘因,(b)協働領域から自律領域への持ち帰り誘因,に二分される。会員の貢献意欲にとって本質的なのは,(b)の持ち帰り誘因である。 (2)「協働と誘因」(実践経営学会北海道支部研究発表会) 自発的な協働に関する支配的論理である集合行為論(M・オルソン)によれば,協働の産物が集合財である場合,人々は費用を負担しようとしないため,当の財は供給不能になる。この問題の解決のためには,人々に非集合的(私的)な「選択的誘因」を提供する必要がある。この論理に対して,本研究は,(a)選択的誘因を供給する管理過程は誰が担うのか,(b)懸案の集合財は供給されないのではないか,という2つの疑問を提示する。その上で,選択的誘因に代わる「持ち帰り誘因」こそが,協働意欲にとって重要であることを論じ,オルソンが採り上げた事例の再解釈を試みている。
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