この研究は、NGOの日々の活動が、どのように利害関係者間で、好ましい活動環境を構築できるかを説明する。その手法として、研究者は対象NGOであるSHAREに積極的に参加し、アクション調査を試みた。そして活動に参加しながら、地域住民、NGO内部問題、活動の成果とその影響等の理解を試みた。SHAREは、東ティモールの保健衛生教育を通して、長い独立闘争により慢性的に生じていた保健医療問題解決を試みている。このNGOの活動は、保健衛生教育促進のみならず、地域のリーダー、学校教員、保健スタッフ、NGOスタッフ等、利害関係者間のコミュニケーションを促進し、保健省と地域保健センター、そして文部科学省の本省や地域支所等との関係を強化することに貢献している。そして、それはNGOと政府諸機関との関係を国レベル及び地域レベルで信頼できる関係構築へとつながっている。 一方、このような関係構築は、NGOローカルスタッフに仕事に対する自信をも与えている。この活動により構築されたネットワークにより、NGOはますます効果的にその活動を展開し、地域住民の保健状況の改善に貢献している。 本NGO活動の、地域社会に対する効果は、その活動分野が保健衛生という比較的専門的分野であることが一つの重要な要因と考えられる。NGO活動が政治的側面を言説も含めて様々な形で強めた場合に、NGO間においても協力よりは分裂の方向へ向かう実態(フィリピンの事例)と照らし合わせることができる。活動の専門的で非政治性が、政府との関係強化と、そこから導かれる活動の効果向上を導いていると考えることができる。
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