今年度は「コープ型」NPO(マネジメントに関わる人々の合議制による統治と運営を行う)と「近代官僚組織的」NPO(理事会が統治機能を持ち、有給スタッフは職務・職能に応じて配置される)の2タイプから団体を選び、ケース・スタディを行うこととしていた。特に1998年に特定非営利活動促進法が生まれたばかりであり、この法律の制定がNPOセクターの発展に大きく寄与したことより、芸術文化関係の中でも特定非営利法人(以下NPO法人)化している団体に対する関心を強く持ち、ケース・スタディにも含めた。 その結果、近代官僚組織的NPOは、年間予算・事業本数・有給職員数などの点において規模が相対的に大きいこともあり、マーケティングや地域との関係づくりには比較的熱心であることがわかった。特にそのうちの一つである地域劇場は、株式会社として多角的な経営の中での芸術文化活動に携わっており、年間予算も30億円をこえる大きな組織である。それだけに公演を売るためにかなりの営業努力を行う一方、遠隔地域にあることより、周辺地域との'共生'も重視している。 一方、新しくできたNPO法人はほぼ全てがコープ型であり、それらはまだ組織・運営の両面において発達過程にあるため、ここから特徴やマネジメント上の課題を抽出することは難しい状況にあることがわかった。 なお理事会については、どのタイプにおいても単なる承認機関であるか(例えば財団法人などの理事会)、あるいは形式上おいてはあるが、スタッフとの混同が多く、別の統治機構として機能していないこともわかった。次年度の研究においては「擬似家族的」NPOを調べる予定であったが、これまでの事例研究を続け、団体の規模や設立後の年数など、違った切り口で分類し、調査を進める。
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